2015/08/30

ゆっくり、じっくり、丁寧に

シンガーの192Uを使って縫物をしていると、他のコンピューターミシンとは違い丁寧に生地をセッティングして、ゆっくり縫うようになっている自分に気付きました。

自分の欠点として、何でも急いで早くやろうとしてしまうところがあります。それでうまく行けばいいのですが、動きが雑になってしまうので、急いだばっかりに失敗してしまう事もしばしば。結局急がばまわれということで、ゆっくり丁寧にしたものは、仕上がりも納得が行く、綺麗なものになります。
今の生活をしていると何でも急いですること、効率ばかりを求めて楽にすることばかり身についていますが、この時代のものを使うと自分の心や動きもゆっくりしてくるような気がします。

Merchant&MillsのCarolyn Denhamさんがシンガーの電動モーターを付けた鋳物黒ミシンで楽しそうに縫っているのを見て、自分もゆっくりじっくり楽しく、丁寧に縫う事を心がけていこうと改めて思いました。

職業用ミシンは1分間に1500針、ジャノメやそのOEMのジューキ・エクシムプロなどは1600針、ジャノメCKは家庭用ながら1000針で早い!、と数字ばかり先走りしている昨今のミシン業界。そういう数字を見るとどんなに優れたミシンなのだろうと思ったりします。早いしパワーもあるし、いいのだろうと、提示された数字を基準に選びがちですが、いったいどれくらいの人が最高速度で長時間縫うのでしょうか。

家庭用ミシンが遅く感じるので、何とか早く縫いたいと言う人は職業用や工業用を買えばいいですが、そういう人はそれ程多くはないでしょう。
パワーがあってシンプルで使いやすいミシンというのはもちろん必要とされるものですが、1分間に何針かということは、多くの人に重要な事ではありません。
数字を見るのではなく、自分にとって何が必要かいうことをまず考えなければなりません。

学校選びでも、その学校の理念や環境が自分に合っているかという事より、偏差値や大企業への就職率などの数字を頼りにしても、実際の内情は数字では表しきれません。就職率がよくてもどんな形で就職したかはわかりませんし、すぐにやめている人の数字はここには出てきません。
偏差値もおおよその参考にはなりますが、どういう教育内容か先生はどういう指導をしているか、他の学生がどういう人たちかなどということはわかりません。
数字はあくまで参考にしかならないのです。
今は企業評価でも、売上、株価、給与、またはランキングなど数字を基準に判断することが多いですが、いい会社かどうかはどれだけの人や社会に対して貢献できたかで評価されるべきです。

工場で同じものを何百枚、何千枚と縫うなら、工業用で5000針ほどもスピードが出るものは必要でしょうが、家庭で縫う場合やオーダーを受けて1点ものを作る仕立屋はそんなに早くなくてもいいのです。だから足踏みの職業用ミシンをいまだに使っているテーラーの人もいるのでしょう。

待ち針を引き抜くことや、カーブ、方向転換などを考えるとそんなに早いスピードでなくてもいいはずです。ソーイングも実際にミシンを動かしている時間よりも、生地を切ったり、アイロンしたり、生地合わせをしたり、しつけをしたり、待ち針を売ったりといった作業が多くを占めるですから、それらをきっちり丁寧に、そしてミシンもゆっくり丁寧にを心掛けて、慣れたら少し早くしてみるのもいいですが、早く完成させよう、終わらせようと思わず、丁寧にゆっくり落ち着いてやった方がいいものが仕上がる気がします。

この192Uを買って改めて、ゆっくり丁寧に、そんな大事な事に気付かされました。
これはミシンだけでなく、料理や洗濯、買いもの、普段の生活全般に言えるのではないでしょうか。
早くしないと終わらないということであれば、どうやったらそれを解決できるか、別の方法を考えればいいのではないかと思います。
本当にそんなに早くしないといけないのか。今それをしないといけないのかと。

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