2015/05/31

パワーがある刺繍ミシン。購入ミシンNO32 JUKI HZL-009S

以前から興味があったJUKIの刺繍ミシンHZL-009S Jupre。
実際に手にしてみて気づいた事、性能や機能特徴を挙げてみます。

特徴・利点

パワーがある
消費電力は後継の010ジュレーブは60W程度ですが、009は90W もあります。モーターの大きさや貫通力は差がどれだけあるのかはわかりませんが、私は白黒液晶でもいいので、パワーが大きいほうが嬉しいです。今人気のエクシードシリーズも65W だということを考えるとパワーがあることがわかります。
最近のミシンは、電力の大きさ以上にコンピューター制御により貫通力が数字以上にあるという話もありますので、この009や010と、エクシードがどれだけのパワーの差になるかはわかりません。
ただ、はっきり言えるのはこのミシンは家庭用ミシンとして十分なパワーがあるということです。

タッチパネル液晶も大きく、見やすい
ベルニナの180や170でタッチパネルの液晶というのは使った事があったのですが、同じ白黒液晶で比べても、こちらの方がモニターが大きくて少し斜め上を向いているので、見やすくなっています。

自動糸切、自動糸調節、手元操作とフットコントローラー操作
 JUKIお得意の自動糸切、自動糸調節はもちろんついていますし、手元でスタートストップできるほか、フットコンもオプションで付けられるので便利です。

押え圧調節がある
ふつう と 弱い のみですが、押え圧調節がレバー一つで変更できるようになっています。

懐が広め
 大型のキルトをする場合などを除き、普通のソーイングであればこれくらいあれば十分という広さがあります。

●本体はやや重い
刺繍ミシンは色んな機能がつまっているためかや本体が重くなりがちです。

●横送り機能もついている。
JUKIの先行機種HZL-9900などと同じく生地を前後だけでなく、横に送る機能がついています。あんまり使わないと思いますが。

一般的なプラスチックボビン使用
010になると自動下糸巻ができるようにボビンがギザギザの入った特殊なものになっているので、実用縫いするにしても、ある程度のコストがかかります。
そう考えると、他の一般的なミシンと共通の11.5㎜厚プラスチックボビンをつかえて、実用縫いも安定している009ジュレーブはなかなかいいミシンと言えるでしょう。
さらに010程、複雑でない分、故障率も低いと思われます。

自動返し縫いと自動糸切を勝手にやってくれるモード
このモードを選択しておくと、縫い初めはスタートを押すと勝手に返し縫い、終点まで来たら返し縫ボタンを押すと返し縫いをした後、糸も切ってくれるので、そのまま布を引き出せます。
これは今まで自分が持っているものでもなかった機能です。


欠点・マイナスポイント

縫い幅の調整ができない。針基線も殆ど変えられない
コンピューターミシンであるにも関わらず、ふり幅の調節が出来ないのはなかなか不便です。それと同時に針基線の変更も左か中のみです。
こういうところは、JUKIの初期コンピューターミシンから90年代くらいまではなかなか変更がなかったのでしょう。

警告音がよく鳴る
センサーお知らせ機能により、すぐ止まり、ピッピッと警告音がなります。
設定や押えがちゃんとなっていないと針が動いてくれず、また糸がちゃんと設置されていないとミシンが止まります。上糸のセットが違う場合や、糸が切れた場合も止まりますし、下糸がちゃんとセットされていなくてもダメなようです。

センサーを駆使した非常に親切なお知らせ機能ではあるのですが、いちいちモニターを見て確認しなくてはならず、止まってしまうことも多いので、こういうコンピューターミシンに慣れていないせいかややもどかしさを感じます。
昔のミシンは油を注した後の慣らし運転の際も、押えが下がっていなくても問題なく針が動くので、うるさくなかったのですが、押えを下げなければ針が動かず、慣らし運転をするときも押えと送りがかみ合っているのでややうるさいです。
安全面を考慮するためか、今のコンピューターミシンは押えが下がっていないと針が動かない事が多いですね。個人的にはこの機能はあまり好きではありません。

縫い始め、返し縫いが遅い
手元操作のミシンによくあるのですが、縫い始めや返し縫いがどうしてもスピードが遅くなってしまいます。返し縫いのボタンを押してから送りが変わるまでワンテンポ遅れる気がします。
コンピューターミシンが電動や電子ミシンに比べて返し縫いで遅れてしまうのは理解しているのですが、他のコンピューターミシンに比べてもちょっと遅く感じます。

◆改めて書く必要があるかわかりませんが、タッチパネル液晶の故障の不安があるという点は気になります。


総じていうなら、便利で使いやすく、良いミシン
個人の感想ですが、針の動きや音がなんとなく、ジャノメのセンサークラフトに似ています。水平釜ながらパワー、貫通力がありそうな感じで、おそらく難素材や厚地も今の一般的なミシンよりも縫ってくれるでしょう。革もあまり厚くないものですが、縫えました。
自動糸切や自動糸調節がついていて、ボタンホールの種類も十分あり、便利なミシンであることは間違いありません。

個人的には、外観デザインがあまり好きではありませんが、とても使いやすく、十分にお勧めできるミシンです。
刺繍をあまりせず、実用縫いとして利用するにしても、縫い目も綺麗で頑丈な頼もしいミシンです。

2015/05/29

JUKI刺繍ミシンシリーズ Jureve 、Jupre

JUKIの刺繍ミシンである、HZL-009 ジュプレ  HZL-010ジュレーブなどは一時結構売れたのか、中古ミシン市場にもよく出てきます。まだ人気があるのか中古ミシンとしてそこそこの値段で売れているようです。

JUKI HZLの刺繍ミシンシリーズは、HZL-008 のアローネ(Allowne)からはじまって、009のジュプレ(Jupre)、010はジュレーブ(Jureve)となって進化していきます。

008、008Nは液晶が2分割されたモノクロ液晶  対応刺繍機はEM-1
009、009S  モノクロ液晶で 刺繍機EM-2
010、 010N、010Sは カラー液晶化され、刺繍機はEM-3 となります。

それぞれ改良されて、SやNなどがモデル名に付いてきます。

010は、下糸を下糸用のスプールにセットしておけば自動供給されるようになっていて、完全自動上糸かけも搭載しているようです。ただし、複雑な機構のため故障することもあり、その安定性を高めたのが010N だということです。010Sはその改良版でしょうが、違いがどこなのかわかりません。

JUKIの刺繍ミシンは、JUKIお得意の自動糸切もついていて、縫いは安定していそうなのですが、なにぶん自分でデータを生成するための自前ソフトがなかったり、後継機が出ていない事から、メーカーとしてはあまり力をいれていないようにも見受けられます。刺繍ではやはりブラザーが日本のメーカーでは先頭を走っていることは間違いありません。ジャノメも刺繍ミシンが今でもありますが、ソフト面でブラザーには及ばないという印象です。

そんなJUKI刺繍ミシンですが、本縫い用として使用するとしても十分な性能があると思われるので、刺繍メインでなく刺繍と実用縫いを併用したいという希望で、縫いが安定したものが欲しいという人には向いているのではないかと感じていました。

そんな事を思いつつ、009Sが安かったので、何となく入札したら、思わず安く手に入れることができました。

続きはまた次回。

2015/05/25

スナップオンタイプの押え

スナップオンタイプの押えって一見すると、どれも同じに見えます。

TOYOTAのHZ-586を買ったら、直線用押えしかついていなかったので、これはジグザグ縫いが出来ないと困るなと考え、数ある他のミシンの押えで使えるものはないかとあらゆるタイプのものを試してみたのです。
HZ-586についていた直線押え
まず、家庭用のローシャンクタイプであるのは間違いないので、ついているスナップオン用のアダプターを外して、手元にあったローシャンクの三巻押えを試してみたら、これは使える事がわかりました。
ローシャンクの押え
ただし、ネジをいちいち締めなおすよりは折角あるスナップオンアダプターを介して、簡単に押えの交換をしたいので、次にスナップオンをいくつか試しました。

まず、ベルニナの130についているスナップオン押えはどうかと付けてみたのですが、押えをホールドする部分から、針を通すために空いている穴までの距離が短いため、針が当たってしまう事が判明。針板穴も押えで塞がってしまいます。
BERNINA130のものをTOYOTA586につけたところ
次にシンガーのコンピューターミシンについていたものを試したところ、穴までの距離は合いました。ただし、今のコンピューターミシンはふり幅7㎜のものが多いので、TOYOTA HZにつけるとやや横幅が大きく見えます。
シンガー 7㎜用 スナップオン
そこでたまたま目についたJUKI HZL-11フルフルのものを付けてみるとこれが完璧に合っていました。


手芸屋さんで売っているスナップオンタイプのミシンの押え、清原製のものはジャノメ以外のものには殆ど使えます、と書いてあります。おそらくシンガータイプと言われるものが家庭用ミシンでは最も一般的なのでしょう。

一方ジャノメはホールド部分から針板穴までが短めですが、ベルニナのスナップオン押えにはジャノメタイプを付けるようになっているのでしょう。

ハスクバーナは装着方法が全く違うので、他社のミシンにはあいません。
ハスクバーナの押え。手前から奥に押し込んで装着。

シンガー(一般)タイプとジャノメタイプの見分け方は、押えをホールドしたところから針穴まで少し距離があればシンガータイプ。ホールドした部分からすぐに針穴がくるようであればジャノメタイプです。

以上、スナップオンタイプの押えはどうなっているのか自分の中でも整理するためと、どれを買っていいかわからない方のためにも書いてみました。

2015/05/23

ミシンに必要な基本的機能を網羅。送り歯高さ調節があるミシン HZ-586

TOYOTA HZ-586について特徴的な事を書いてみます。

このミシンはカム内蔵で、ダイヤルにより縫い模様選択が出来るミシンです。この点はフラットベッドでもカムを交換するミシンよりは便利です。
送り長さ調節、振り幅調節、針基線3段階変更、押え圧調節など、この当時のミシンが持っていた標準的な機能はもちろん備えています。

さらに、送り歯の高さが変更できます。
下の▲3つ書かれたところのレバーで送り歯高さ調節

通常生地用、薄地用、送り歯ダウンの3段階を本体のレバー一つで調節ができるのです。

この機能を持ったミシンを購入するのは初めてですが、昔の直線ミシンでは EMB・送り歯ダウン(刺繍用)、SILK・薄地用、NORMAL・普通地用と3段階の調節レバーがついているものが結構ありました。
これは今のミシンであまり見られなくなった機能ですが、ブラザーの職業用ヌ-ベルクチュールではいまだに送り歯の高さ調節がついていますので、あれば役に立つ機能であることは間違いないのですが、いつごろからか家庭用ミシンではあまり見かけなくなりました。
押え圧調節がある今のミシンも送り歯調節までついているものはあまりないのです。

垂直半回転釜で普通の家庭用ボビンが使えます。
押えは家庭用の一般的なものが付けられます。

収納ケースですが、足踏みミシンをポータブル電化する時によく使われる普通のものと違い、ケース内に2つコンセントが内蔵されています。おそらくひとつはランプ用、もうひとつはモーター用ではないかと思います。


操作もしやすく、安定していて、貫通力もあり、縫い目も綺麗です。

コンピューターミシンであれば、これ以上の機能がふんだんにありますが、改めてこれで十分と認識させてくれるミシンでした。
駆動部にプラスチックや樹脂部品がないので、壊れにくいし、愛着が持てるデザインで、耐久性にも優れています。


以前このブログで触れた、1960年代の「暮しの手帖」のミシンの商品テスト記事でも、シンガーに次いで評価が高いと見て取れたのがトヨタです。
その当時のテストに使ったトヨタ直線ミシンは、故障率が低く、固体によりばらつきがなく、縫い目も綺麗ということが書かれています。

ブランド力は他のミシンメーカーに及びませんが、実力は実際につかってみないとわからないですね。このミシン好きです。

2015/05/22

豊田自動織機 ~トヨタミシン~アイシン精機 購入ミシンNO.31 TOTOTA Utility HZ-586

トヨタってミシンなんか作ってたの? そんな話を時々聞きます。

トヨタと言えば、今や日本いや世界をリードする自動車メーカーですが、元々は豊田自動織機という会社で織機を作っていたのです。今はグループ会社のアイシン精機がTOYOTAの名前でミシンを生産し続けています。

日本で家庭用ミシンと言えば、ジャノメ、ブラザー、JUKIというのが3大メーカーとされますが、シンガーハッピー、ジャガー、トヨタがその次に続くメーカーと言えるでしょう。
それ以外の山崎などは、ラインナップや歴史の点で上記メーカーには及ばない印象です。

今、家庭用ミシンの購入について相談されたとき、トヨタのミシンを勧める人は少ないでしょう。今のトヨタミシンは安価でコンパクトなものも多く、以前とは比べられないくらいの部品のコストダウンが行われているはずです。
ただし、これは他のメーカーも同様なので、メジャーブランドではないから話題に上らないのか、製品の質が価格と比例して低いのか。私には判断がつきません。

そんなトヨタのミシン、私も今までそれ程注目していなかったのですが、パッと見てほしいと思わせるデザインのミシンを見つけてしまいました。
60年代のクラシックカーのような、当時走っていた市電の車体のような丸みがあるフォルムに今のミシンにはない色使いの前面パネル。ダイヤルやレバーのデザインもユニークです。

TOYOTA HZ-586
このミシン、アメリカのマサチューセッツ州ボストンにかつてあった歴史あるミシンメーカーWHITE社にOEM提供されていたものです。
ebayでたまたまみかけたWHITE 940を見た時、ダイヤルの模様やレバーなどがTOYOTAのミシンに似てるなーと思い調べてみたら一時期WHITEのミシンの生産をトヨタが請け負っていた事があると書かれていました。

WHITEの940というモデルとトヨタのHZ-586(緑)やHZ-585(青)の筐体デザインはかなり似ています。どちらかがベースになった事はまちがいありません。
WHITEの940はモーターパワーが1.3Aもある強力なものだとわかったので、さらに興味がわきました。TOYOTAのHZ-586がどれくらいかわからなかったのですが、デザインが気に入ったのと、フラットベッドのメタル製ジグザグミシンに興味があったので、購入しました。

モーターはWHITE940ほど大きなものではないようで、当時の日本の家庭用ミシンと同じく70Wの消費電力のようですが、鋳物ミシン程重くないながらも、頑丈でどっしりとしています。ボディは大き目です。

実際に使った感想はまた次回

2015/05/18

思いのこもった製品

最近のミシンにはこのミシンを何とかいい製品にしようという気概のようなものが見えてきません。

昔は機械ミシンでも、どこかのマネをしただけのものを除き、デザインにも機能にも各メーカーの特色のようなものがありましたし、それぞれの色というのが感じられました。

今は一部のミシンメーカーを除き、こだわりや特色が感じられません。

ミシンに限らず、どんな製品やサービスもそうですが、その製品をこういうものにしたい、こういう人に使ってほしい。こういう場面で役立ててほしいと考えていたからだと思います。

技術者ももっとその製品にかける思いがありました。販売する人もその製品を届ける誇りを感じられていたのだと感じます。
製品に感じられる愛着というのは、その製品が生まれながらにして持っている作り手の想いというのがどこかに内在していて、目に見えずとも感じるものです。
どれだけその製品を作るのに時間をかけたか、考えたか、手を動かしたかでそういうものがどれだけ入っているかが変わってきます。

今はどのメーカーもそれ程変わらず、他のメーカーに如何に勝つか、あそこはこの機能がついていないから、これを付けようと無理やり差別化しているように感じます。
またスピード化が求められ、企画から製造の段階までそれ程時間をかけられなくなっていて、誰もそれに疑問を呈さないくらい、常態化しているのでしょう。

今一度昔の製品が持っていた輝きや、重みを取り戻すため原点に立ち返って、その会社はどんな製品を作りたかったか、その製品を通して使う人にどういうことを実現してほしいのかという事を考えてみてほしいと思います。

そうすれば、新しい未来が見えてくるでしょうし、各人にとって他では代替不可能な製品、愛着が持てる製品がつくれるはずです。

やはり昔のミシン/昔の製品は良かったです。今のところ、そう言わざるを得ません。

だから私はそういう製品を欲しいと思いますし、人にもそういう製品を勧めたいのです。

2015/05/16

電動・電子ミシンのススメ

最近、電動ミシンはやはりいいなと見直しています。
今までは、つい便利で綺麗、持ち運びもしやすいコンピューターミシンを使ってしまっていましたが、普通の使い方なら電動や機械式で十分ではと思うのです。

また、コンピューターミシンは、数種類のボタンホールが縫えたり、あらゆる模様縫いが出来ます。加えて、針停止位置の指定、縫い速度の設定、自動糸切、自動糸調節、その他たくさん便利な機能があるので好きなミシンはコンピューターミシンにもたくさんあります。
ただし、時々不安になることがあるのです。
いつか基板や液晶、ステッピングモーターに不具合が発生して縫えなくなることがあるのではないかと。

80年代の初期のコンピューターミシンに比べたら今のミシンは基板も安定感のあるものに改善されているでしょうが、それでも液晶やタッチパネルがいつダメになるかわかりません。
タッチパネルの液晶を使っているミシンは、使わない時も電源をつけていると、液晶の劣化につながるのではないかと心配になりますが、電動ミシンではそういうことがないです。

コンピューターミシンは何でもやってくれる便利なものですが、コンピューターに依存してしまっていて、こんな事ができるのは自分の力ではなく、コンピューターが優秀だからだとも思ってしまうのです。
そして、何か不具合があっても容易には触らせてくれないし、半端な知識では修理することが難しい。

その点、電動ミシンは故障をしても機械的な事(単純な固着など)が殆どですし、部品も交換可能な事が多いです。
電子ミシンも、速度制御や針動作の制御に電子基板がありますが、電動に匹敵するくらい安心感はあります。
そう考えると、多少の不都合や不便さは受け入れて、電動・電子ミシンを使う方が安心感、安定感、信頼感は高いのです。

私が買ったもので言うと、ジャノメ・New HomeのTwo in Oneは電動ですが、ロックミシンもついていて非常に便利で使い勝手がよく、好きです。Riccar RZ-701も工業用垂直釜採用の電動ミシンで安定していて操作が簡単で使いやすい。

シンガーの15種は縫い目が何より綺麗です。
多少の無理をしても、ちょっとやそっとじゃ壊れなさそうな安心感があり、殆どのものを貫通してくれそうな気がするのです。
ElnaのLotusやStella、一部電子部品があるベルニナの1021や1050も多少の事では壊れなさそうな気がしますし、職業用ミシンもいわゆる高速直線電子ミシンです。

電動・電子ミシンを中古で購入した場合、到着時は長年使っていなかったためジグザグしなかったり、どこかに不具合があったりするものが多かったのですが、内部の清掃、注油、ネジの締め直しなどをすることにより自分でほぼ直せました。
これがコンピューターミシンでは無理でした。修理屋さんに出しても直らないものもあったのです。
そうなると電動ミシンの安定感はコンピューターミシンとは比べ物になりません。液晶タッチパネルの刺繍ミシンなんかはさらに複雑でどこかの設定が違っていたりすると、ミシン自体が動きませんし、ちょっとした不具合で修理不可となることも考えられるのです。

テーラーの職人さんやその他のプロも昔と変わらない電動の頑丈な鋳物ミシンを使っていることが多いですから、その信頼感や耐久性は今のミシンの比でないことは明らかです。

1950年代くらいから販売されていたシンガーのミシン191Uの説明書にはこう書かれています。

””このシンガー191U型ミシンは一生お使いになれて、かならず御満足いたゞ けるものと信じます””

今のミシンにこう書かれているもの、いや、この文面を記載できるミシンがあるでしょうか?

特に便利な機能が必要ないという人、直線とジグザグと簡単なボタンホールが出来ればいいという人は電動かせめて電子ミシンくらいがいいのではないでしょうか。
長持ちするもの、シンプルなものをお求めの方に電動、電子ミシンをお勧めしたいのです。

ただ、かつてのミシンが持っていた耐久性のある電動、電子ミシンはなかなか新品では購入できません。
現行販売されているミシンでは、ベルニナの1008、ヤマザキ・ブルーバードなんかが電動、電子ミシンでお勧めしたいものです。
それ以外でいうと、筐体や一部部品にプラスチックが使われていて、貫通力は上記2つとは違うでしょうが、クライムキミシン(黄色)、ジャノメYN-507、シンガー・モニカピクシーなども作りがシンプルで耐久性も一定以上はあり、通常使用には十分な働きをしてくれるはずです。

※なお、電子ミシンは低速でもパワー・貫通力があったりしますが、電動は低速では高速運転時に比べてパワーがないのが難点です。ですからそれが気になる場合は電子ミシンの方がいいかもしれません。

2015/05/12

70年代のミシンの有用性

前回はこれまでのミシンの変遷を年代ごとに整理して、数あるミシンの中で、70年代のミシンが最も耐久性、機能性、利便性に優れているのではないかという一つの持論にたどり着いたのですが、その理由を今回は説明していきたいと思います。

70年代くらいまでは服も高く、気に入ったものもすぐには見つかりにくかったので、まだ家で服を作っていた人も多くいたのではないかと推測されます。
そのため洋裁をするのに向いた、頑丈なミシンが多いのです。

80年代のミシンもまだ精度の高い金属部品や金属ボディ採用で頑丈に作られていますが、コンピューター基板がだめになると、使えなくなるものも多いです。
90年代、2000年代になると液晶画面がだめになるともう使えなくなったりしますので、耐久性はそれ以前のミシンに比べてありません。

50~60年代以前のミシンはもちろん耐久性は高いですが、直線しか縫えなかったりするので、ボタンホールやジグザグを便利に一台でこなしてしまいたい場合には別のミシンかアタッチメントが必要になります。また、フリーアームにならないものも多いので、そういう縫い方をしたい場合は困ります。また、持ち運びするには重すぎて、今の家庭事情や、その他の道具、家電製品と比べるとかなりの不便なものと感じるでしょう。

もっとも、60年代までのミシンは、色んな機能はありませんが、耐久性には優れているので、一番頑丈で、故障も少ない事は否めません。

ただし、現在の一般的な使用にはジグザグなどもあった方がよいので、整備された70年代のジグザグミシンを使うのがいいのではないかと考えたのです。
だから、今でもジャノメのトピアシリーズやエクセル、ブラザーのペースセッターなどが国内外問わずに人気が衰えないのではないかと。

私の持っているor購入したもので70年代のものと言えば、ジャノメ・エクセル813、815、シンガー・モナミ353、394、初代機は68年発売ですが70年代に主に販売されていたエルナロータス、その後継のエルナステラ、ジャガーMATEなどです。

一部にプラスチックギアがあり、これが劣化すると交換の必要があるのが難点ですが、それが交換により解消されれば、頑丈で、満足できる貫通力、糸締まりがよく綺麗な縫い目、そして清掃して油を注してあげれば大体元気でいてくれて、一部の部品劣化はあっても交換できればずっと使える。それ以前のミシンに比べると収納が容易で持ち運びも可能なもの。
送りや針棒の制御が機械式なので、電力がなくなったとしても、手廻しでも全ての縫いが可能。

80年代から90年代にかけての高性能ミシン、リッカーベルニナやJUKI The misin、ジャノメ・センサークラフトもいいですが、これらはコンピューター基板やステッピングモーターがだめになると使えません。ただし、糸調節や貫通力などはこの時代の上位機種が一番あるかもしれないので、70年代のものよりこちらの方が優れている点は多々あります。

2000年代以降のミシンはきれいで便利な機能満載ですが、一生ものと呼ぶにはちょっと頼りなく、いつか壊れるかもしれなしいし、壊れたら修理代も高い。
多くの機能を備えていても使わない機能が殆どです。

個人的には70年代のものより80年後半から90年代のものを愛用しています。それは様々な縫い方ができるのと自分の使い方にはこのあたりのものが合っていると思うからです。
ただし、あとちょっとこういう機能があればいいのになーと思える70年代のミシン、足りない部分は自分で工夫したりアタッチメントで乗り切ったりして、アナログで解決できる安心感があります。電力がなくても手廻しで何とかなる事もありますし、何より整備しやすく、シンプルなつくりなのです。

これが、80年代からはメンテナンスが難しくなってきます。注油不要をうたったミシンが登場し説明書にも注油箇所が書かれていなかったり、グリスを使ったりするので使用者が簡単には整備できず、基板やステッピングモーターがあるので素人には構造を理解するのが難しく、だんだんとミシンと使用者の距離ができて、耐久性も少しずつ落ちていくのです。
素人ではボディを開けにくくしてあるのも80年代以降のミシンで多くなってきます。

電動で、直線・ジグザグ・ボタンホールが出来て、フリーアームになり、ポータブルにしても無理がない。あまりミシンをヘビーに使わない人はこのあたりのミシンを、自分で出来る注油などのメンテナンスを時々しながら使っていくのがいいのではないかと考えたりしたのです。

ということで、70年代のミシン、今見直してみるのはどうでしょうか。
日本の歌謡曲や流行歌もこのころまではプロの作詞・作曲家が時間をかけて作ったのがわかる優れたものが多いような気がします。歌手もこのころまでの人は80年代以降のような下手な人はいません。
やはり様々な面で今とは時間の使い方が違ったのでしょう。

2015/05/11

ミシンの変遷を辿る。

私は個人的には今のミシンより、昔のミシンが好きですが、ミシンは年代によりある特徴に定義できるのではないかとふと考えました。そこで、自分なりに考えた事を整理してみることにしました。

18世紀末から19世紀前半に欧米で発明・開発されたミシン。日本に入ってきたのは1800年代半ばのことです。最初は人力で、手廻しや足踏みで動力を発生させて縫うものでした。

1900年代に入り、電動で動くモーターをとりつけて動くようになっていきます。

そして、1940年代、第二次世界大戦くらいまでは、鋳物の黒ミシンが主流。返し縫ができるようになったり、釜の構造に少しずつバリエーションが増えたりしていきますが、基本的には直線を縫う機能に特化していました。

ここまではアメリカやドイツのメーカーが一流の高級品として捉えられていました。

戦後、日本ではシンガーのミシンを模倣し、それに追いつけ追い越せとあらゆるミシン会社が勃興し、ミシン製造を始めます。

1950~60年代 電動、ジグザグの時代 
ベルニナのページを見ると1930年代にジグザグミシンを作ったと書かれていますが、

一般的には50年代ごろからジグザグミシンが登場し、60年代にかけて少しずつジグザグ機能を持つミシンが増えて行きます。これに合わせて、黒だけではなく、インテリアにもなじむミシン、ボディの色にバリエーションが増えてきます。動力は、足踏みか電動でした。
このあたりからアメリカやドイツメーカーを日本が猛追していきます。アメリカなどに日本のミシンを輸出するようにもなります。

60年代から70年代前半にかけてはカムを交換してあらゆる模様が縫えるミシンが数多く生産されました。

1970年代 カム内蔵、電子ミシンの時代
70年代にカムを内蔵したミシンが登場し、ダイヤル操作だけであらゆる模様縫いが出来るようになってきます。
そして電子基板を内蔵し、レバーやボタンでスピード制御などを行えるようになってきます。
この時代までは機械ミシンの時代です。ボディも頑丈で、部品も金属製が多かったので、少しずつ、プラスチック部品が少しずつ導入されてきます。
修理も比較的容易で、整備すれば長期にわたり使えるのはこの時代までに作られたミシンです。

またフリーアームにできるミシンが70年代~80年代に増えてきます。

1980年代 コンピューターミシンの時代
80年代に入り、針の動きをコンピューターで制御できるミシンが主流になっていきます。
文字縫いができるミシンが出てきたのもこの頃です。まだ金属ボディの頑丈なミシンが多く、コンピューター基板が初期のもので重く大きくなりがちでした高額なミシンが一般的に売れていたのもこの時期までです。
長く使え、信頼できるミシンが多かった時代です。

1990年代 コンピューターミシンの進化と小型化・軽量化時代
プラスティックボディを採用したミシン、軽く持ち運びしやすいミシンが増えてきます。金属部品からプラスチックや樹脂製の部品が増えてくる時代でもあります。
また手元操作や自動糸通し、自動糸切が出来る便利なミシンが増えてきます。
小型化し軽量化するために縫い性能や耐久性が犠牲にされるようになります。押え圧調節がないミシンが多くなってきて、機種によって厚地が縫えなくなってきたのもこの頃からです。
家庭用ミシンではプラスチック水平釜が主流となっていきました。

キャラクターものや、ワンポイント刺繍が出来るミシンが出てきて、かわいいボディへと移行していったのもこの時期です。

2000年代 高級刺繍ミシンと安価なミシンの二極化時代
消費社会が進み、ますますミシンの需要がなくなってくるのに合わせて、複雑な機能とパソコンとのリンク機能を持った高機能・高級ミシと、ちょっとだけ縫いたい、小さい、軽い、安いのコンパクトミシンが主流の時代になってきます。
今一部で売れている、JUKI、ブラザー、ジャノメの中価格帯にある実用性の高い優れたミシンは、90年代コンピューターミシンの焼き直しと言ってもいいものです。液晶のカラー化やLED証明、ワンタッチ○○のようなものくらいしか技術革新がありません。


ここまで整理して何を言いたいかというと、
長く使いたい、そして頑丈で少しだけ便利なミシンが欲しい場合は、70年代のミシンがいいのではないかということ。その理由についてはまた次回

2015/05/05

お奨めマークを付けたい、革も縫える家庭用ミシン登場。 ジャノメLC7500。

以前、家庭用ミシンで革を縫う事というタイトルで投稿しました。その投稿はアクセス数が多く、コンスタントに見てくれる人がいるようです。

それだけ皆、家庭用ミシンで革を縫いたいと思っているということなのでしょう。

その投稿で革を縫う人のために販売されている家庭用ミシン、ジャノメのホームレザーという機種を取り上げたのですが、そちらは標準付属品が違うという事以外、現行の電動家庭用ミシンとの違いがわからないと書いたのですが、その後同じくジャノメからレザー縫製を目的とした家庭用ミシンが発売されていたのでした。

それが、ジャノメLC7500という機種です。

この機種は基本に立ち返り、かつての家庭用ミシンが持っていた機能を持っています。

まず、今や珍しい半回転垂直釜です。ジャノメで半回転垂直釜を見たのは、かなり久しぶりの事です。
縫い性能で定評のあるCKシリーズやメモリークラフトなんかも水平釜なので、このミシンのジャノメにおける特殊性が見て取れます。

押え圧調節も旧来のHA型や鋳物ミシンに見られた、調節金具をプッシュすることにより無段階に調節できるようになっています。今のものは3段階とか4段階くらいのものも多いですが、これは非常に重要な機能です。

ふり幅と送り長さはダイヤルで調節できます。ただし、レザー・厚物縫製を想定した機種なのでジグザグ縫い以外の模様縫いはありません。個人的にはた単純なジグザグに加えて、ニットや伸縮生地を縫う時に役立つ3点ジグザグと、裾上げ用のまつり縫いが欲しいと思ってしまいます。
汎用性を考えたらこれくらいの機能は最低限欲しく、敢えていうならこの点がマイナスポイントです。

フリーアームにもなりますし、フットコントローラーも標準装備です。
レザーの他、厚地を縫いたい人向けに開発されたもので、かつての家庭用ミシンが当たり前に持っていた基本的な機能が付いています。

デザインも余計な色や模様がなく使う人を選ばないシンプルなものですし、複雑な機能がなく、アルミダイカストボディで耐久性もありそうです。
重量は7.6KG、最高縫い速度860針/分も家庭用ミシンとしては十分な速さです。
消費電力は80Wでパワーもあります。

貫通力や送りの力は職業用やベルニナなどには及ばないでしょうが、それらのミシンよりも価格が手頃です。一般的な布帛の縫製もおそらく問題ないでしょう。
新品でシンプルながら安定したミシンが欲しい、でもそんなに高額なものは買いたくないという人にお奨めできるミシンが登場した気がします。

2015/05/03

ミシンの下糸巻が回らない。下糸巻固着かゴム劣化か。自分で直すために

何となく、電動ミシンを使いたくなり、ジャノメ New Home Two in Oneを久々に使ってみました。今までこのミシンで下糸を巻いた事がなかったので、気づかなかったのですが、下糸巻が機能しないのでした。

HA1の一般的な11.5㎜厚家庭用アルミボビンを使うものなので、今までは他のミシンで糸を巻いたボビンを使用していて、このミシンの下糸巻を使った事がなく気づいていなかったのです。

このミシンは購入時、はずみ車も固くなかなか回らなかったのですが、注油をすることによりだんだんと調子良く使えるようになったものです。全体的に未使用の期間が長期にわたった事による固着が発生していたのだと思います。
古いミシンは丁寧に注油して少しずつリハビリのように動かしていってあげることにより機能と動きが復活してくることが多いものです。

下糸巻もゴムの劣化や接触の不良かと考えトップカバーをあけて中を確認しましたが、ゴムもまだしっかりとした形ですし、問題はなさそう。

接触の確認はなかなか難しかったのですが、ネジのゆるみなどもなく、下糸巻時と縫製時の移動のためにあるバネなども問題なさそうです。

下糸巻ゴムはまだしっかりとしています。

そして接触が悪いのかと、右側に下糸巻を移動させて回そうとして、さらにちょっと押し付けてみると回り出しました。そしてそれを何度か繰り返すと問題なく回るようになりました。

手で押えて下糸巻が何とかまわりましたが。。。。

しかし、直ったと思ったのも束の間、時間を置いて回してみるとまた回らなくなりました。接触が悪いのかとまた押し付けてやると、そのうち回るようになるのですが、時間を置いて再度やってみるとまた元に戻ります。

今まで下糸巻に問題のあるミシンがなかったので気づかなかったのですが、縫製時の位置(左側にある状態)に下糸巻器を動かして、手で回してみてもどうも固いのです。右(下糸巻時の位置)にしても同様に固い。
下糸巻・縫製時の位置、固着していると手でも回しにくい。
うーん。これは何か固着なのかと、ネットで検索して油の件をなんとなく書いているページがあったので、下糸巻も注油が必要なのかと考えました。

機種により下糸巻の方法や位置が違うので、はっきりした記載を見つけられたわけではないのですが、軸付近、金属部分が回転するところ(プラスチックやゴム部分に多量の油の適用は気が引けるので)に綿棒に油をしみこませてそれを塗ってみました。
少し回転が良くなったような気がしたので、スプレー式のミシンオイルをこれも少しだけかけてみました。
回転軸の金属部分に注油
そうすると、右に無理に押し付けることなく下糸巻が滑らかに回転するようになりました
また、縫製時の位置で手で回してみても、驚くほど軽く回るようになったのです。

今までここを手で回したりしたことがなかったのですが、普通はそれ程の抵抗がなく回るのだと思います。
やはり下糸巻も適度(多すぎない程度)の注油は必要だと認識したのでした。

下糸巻を縫製時の位置で回してみて固ければ固着の可能性があります

手で回して軽く回る場合は、下糸巻の位置(右)にした際の回転軸との接触不良の可能性が高いです。
ゴムの劣化の場合は、下糸巻ゴムが安価で売っているので、一般的な機種では簡単に交換できます。

以上、下糸巻が機能しなくなった人の参考になればと書いておくことにしました。